はじめに
MINLABOインサイトではヘルスケア業界に巻き起こる様々な課題について深堀りをしていきます。今回はESDの技術レベル格差に注目して掘り下げて行きたいと思います。
※本記事に出てくる言葉
ESD: Endoscopic Submucosal Dissection
VR:Virtual Reality
背景
近年悪性腫瘍の罹患者数、死亡数は増加の一途を辿っています。しかしながら、罹患部位別でみると減少傾向にあるがん種別もあります。
その一つが胃がんです。早期発見、治療方法の発展によりポジティブな変化が起きており、特にESDによる早期治療の浸透が寄与していると考えられます。一般的に手技は経験症例数がものをいうとされていますが、医師の働き方改革により若手医師がこれまでと同様に経験を積めるのか懸念されます。そこで改めてESDの技術について掘り下げていきます。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)について
ESDとは、早期胃がんや前がん病変を内視鏡で切除する手術法です。内視鏡を用いて粘膜下層を剥離し、病変を一括して摘出します。身体への負担が少なく、回復が早いのが特徴です。特に広範囲や複雑な病変に適しており、高度な技術と経験が求められます。
ESDトレーニングの課題仮説
トレーニングプログラムの標準化不足 : ESDのトレーニングプログラムが標準化されておらず、医療機関や地域によってトレーニングの内容や期間が異なり、学習効果に差があるのではないか?
持続的なトレーニングの欠如 : ESDの技術維持には持続的なトレーニングが必要であるものの、忙しい臨床業務の中で定期的なトレーニングが困難となっているのではないか?
参考文献
内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) は高い治癒切除率と低い局所再発率を誇るが、その技術的難易度から普及が進んでいない。ESDの普及には、適切なトレーニングシステムの確立が不可欠。日本と西洋のトレーニングに対する考え方、取り組みの違いについて示している。
消化管の癌性および前癌性病変に対する内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) の トレーニングプロトコルを開発し、その結果を評価しました。トレーニング プロトコルは胃と直腸の病変に対して優れた結果を示しましたが、上部結腸のESDトレーニングの課題について示しています。
内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) は消化管の早期癌や異形成病変に対する確立された技術です。高度な知識とスキルが必要なため習得は難しく、日本では伝統的な師弟制度のもとで数年かかります。このモデルは米国では適用が難しいですが、段階的なアプローチが米国でのESD普及に寄与しています。今後、日本と米国の内視鏡医や専門団体の協力が重要であり、既にいくつかの技術革新も進展している事を示しています。
最近の技術進歩と内視鏡医のスキル向上により、内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) は一般病院でも標準治療となりました。高リスクのため、安全かつ効率的に行うための治療手順やトレーニング方法が開発されています。日本の大学病院では、新設された消化器内視鏡科でのESDトレーニングシステムにより、研修医を含む全手技で穿孔率がゼロを達成しました。本記事はこれらの手順とシステムについて解説しています。
内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) の普及により、治療内視鏡に革新が起こりました。ESDの普及には、動物モデルを用いたトレーニングやハンズオンコースが重要です。このレビューでは、世界的なESD専門家が各国でのトレーニング方法や安全技術について述べています。Adolfo Parra-Blanco博士はトレーニングモデル、Joo Young Cho博士は韓国での実践コース、高階利博士は品質管理と基本技術、Tsuneo Oyama博士は新技術、Jae-Young Jang博士は拡大内視鏡の有用性についてレビューしています。
5つの論文の共通、差分
論文に共通している点(特にESDのトレーニング、手技のスキルについて)
ESDの基本的な重要性
すべての論文で、ESDが高度な治療法であり、技術的な熟練が求められることが強調されています。
トレーニングのステップアップアプローチ
多くの論文で、トレーニングは段階的に進めるべきであることを述べています。例えば、観察、動物モデルを用いたトレーニング、専門家の監督のもとでの臨床ESDなどが含まれます。
スキルの評価
技術の評価には、エンブロック切除率や合併症率などが使用されることが共通しています。
専門家の役割
専門家の監督や指導が不可欠であり、トレーニングの各段階で重要な役割を果たすことが述べられています。
論文間の差分
トレーニングモデルの使用
一部の論文では、実際の人間の症例を用いたトレーニングに重点を置いている一方、他の論文では動物モデルやシミュレーターの使用が強調されています。
地域による違い
日本と西洋諸国でのESDの普及度やトレーニング方法に違いがあることが述べられています。日本では体系的なトレーニングが普及しているのに対し、西洋諸国ではまだ発展途上であるとされています。
ESDの技術力向上についての課題
長い学習曲線
ESDは学習曲線が長く、熟練するまでに多くの時間と症例数を必要とするため、トレーニングの効果を上げる方法が求められています。
合併症の管理
出血や穿孔などの合併症を適切に管理する技術の向上が重要です。これには、実際の症例を通じて経験を積むことが必要とされています。
標準化されたトレーニングプログラムの不足
多くの国で公式のトレーニングプログラムが不足しており、標準化されたトレーニングシステムの構築が求められています。
論文から見えてきたこと
体系的なトレーニングの重要性
体系的かつ段階的なトレーニングプログラムの構築が、ESDの技術力向上には不可欠といえます。
習熟期間と働き方改革の影響
ESDの技術が習熟されるまで時間を要するが、働き方改革の影響を受け、習熟レベルに到達する期間がかかる可能性があります。そのため従来とは異なったトレーニング手法の開発が求められます。
解決策のアイディア
標準化されたトレーニングプログラムの構築
多段階トレーニングコース
理論的な知識から始まり、動物モデルやシミュレーターを使用したハンズオントレーニング、最後に専門家の監督下での臨床トレーニングを含む多段階トレーニングコースを構築します。
オンライン教育プラットフォーム
基礎知識や手技のビデオチュートリアル、模擬手術のフィードバックセッションなどを含むオンライン教育プラットフォームを作成します。
画像診断トレーニング
ESDトレーニングプログラムに画像診断技術の使用方法を組み込み、医師がこれらの技術を効果的に使用できるようにします。例えば、AIを用いた画像解析や蛍光イメージングの実践トレーニングを行います。
実践を代替するトレーニング機会の提供
シミュレーターの活用
リアルな手術環境を再現できる高度なシミュレーターを使用し、トレーニングの効果を高める。例えば、バーチャルリアリティ(VR)技術を取り入れたシミュレーターを活用します。
模擬臓器の使用
新素材の模擬臓器を用いたトレーニングを導入し、短期間で経験数を増やすことにより習熟レベルの早期向上を期待できます。
ソリューション:次世代型ESDトレーニングシステム
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お問い合わせ Mail:sales@minlabo.co.jp
執筆者 山本 快仁:MINLABO partner/中小企業診断士
MINLABOについて
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