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Vol.14_産業振興の観点から見るこれからの日本の医療機器・ヘルスケア政策の全体像-実態データが示す課題と、政策の転換点に立つ現場の声

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目次


はじめに


MINLABOインサイトではヘルスケア業界に巻き起こる様々な課題について深堀をしていきます。今回は第3期 医療機器・ヘルスケア開発協議会(第1回)から産業振興の全体像を解説します。


第3期 医療機器・ヘルスケア開発協議会(第1回)重要論点


2025年6月、内閣府と経済産業省が共同で開催する「第3期 第1回 医療機器・ヘルスケア開発協議会」が開かれました(議長:中石内閣府 健康・医療戦略推進事務局長)。本協議会は、医療機器・ヘルスケア分野におけるわが国の産業振興とイノベーション創出を目指し、第2期の議論を引き継ぎながらPDCAサイクルを通じて政策を推進する重要な場といえます。


今回の協議会では、産業政策の視点から特に以下の3つの論点が際立ちました。


1. スタートアップ振興を核としたエコシステム構築

2. 医療DX・データ利活用の加速

3. 国内開発力・供給網強化を見据えた環境整備


以下、それぞれのテーマを中心に構成員の発言を交えながら整理します。


**構成員一覧**


松浦 重和 文部科学省 研究振興局長(代理)

内山 博之 厚生労働省 大臣官房 医薬産業振興・医療情報審議官

高江 慎一 厚生労働省 医薬局長(代理)(オンライン参加)

南 亮 経済産業省 商務・サービス審議官

池野 文昭 スタンフォード大学 主任研究員

近藤 恵美子 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 理事(技監)

菊地 眞 公益財団法人 医療機器センター 理事長

佐久間 一郎 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 医療機器・ヘルスケアプロジェクト プログラムディレクター

宮川 政昭 公益社団法人 日本医師会 常任理事

中井川 誠 一般社団法人 日本医療機器産業連合会 副会長(代理)


スタートアップ振興と産業エコシステムの構築


議長の中石氏(内閣府)は冒頭、「日本はスタートアップが少ない中でも、医療機器関連は比較的多い」と現状を肯定的に捉えつつも、次のように課題を指摘しました。

「スタートアップと大手企業の連携をより強くし、産業構造そのものを進化させる必要がある。国内でイノベーションを起こし、それを海外展開し外需を取りにいく流れを作りたい。」

この流れは、政府が策定した「第3期健康・医療戦略」にも明確に位置付けられている。資料によると、今期は8つの統合プロジェクトのうち、2番目に「医療機器・ヘルスケア」を掲げ、国内スタートアップと既存企業の連携支援、エビデンス構築のための環境整備を重点に置いています。

加えて、AMED(日本医療研究開発機構)の佐久間プログラムディレクターは、こう強調した。

「医療機器分野は事業間をしっかりつないで出口まで持っていくモデルが重要。前期には、迷走神経刺激カテーテルの事例のように基礎研究から治験・臨床へつながる流れを作ってきた。これを3期でさらに横展開したい。」

このように基礎〜応用〜実用化まで切れ目のない支援体制(シームレスな連携)は、日本の医療機器スタートアップにとって成長の生命線となります。



医療DXとデータ利活用の推進


もう一つの焦点は、医療DXおよび医療データの利活用です。議事録では佐久間氏が次のように述べ、今後の産業競争力の鍵として医療データの活用を強調しました。

「これまで研究段階ではデータ活用が進んできたが、製品化・医療機器評価の段階で個人情報保護法対応など課題が多い。研究者も安心して使え、データ提供側も安心できる仕組みを構築しなければならない。」

また、PMDAの近藤理事は、プログラム医療機器(SaMD)の開発が急増する中で、薬事経験の少ない事業者の増加に触れ、

「手引きや教育動画を出しているが、活用されずに基本説明から始まる無料相談が多い。リテラシー向上は業界全体の課題。」

と指摘。SaMDやAI医療機器の開発・承認を効率化するためには、開発者側の規制理解やデータ利活用への意識改革が欠かせません。

第3期戦略でも、全国医療情報プラットフォーム創設や、RWD(リアルワールドデータ)の二次利用制度整備を大きな柱に据えており、データを基盤とした医療機器の迅速な開発・承認を加速させる方針が見て取れます。



国内開発力・供給網の強化


さらに議論では、国内開発力とサプライチェーンの強靭化に関する問題提起も多くありました。

AMEDの佐久間氏は次のように述べ、国内開発力の強化を訴えました。

「円安や薬価の低迷から、欧米メーカーにとって日本市場が魅力を失い、デバイス供給が滞るリスクもある。だからこそ、国内の医療機器開発力を高めることが必要。」

また、菊地理事長(医療機器センター)は第2期の医療機器基本計画KPIフォローアップ結果を紹介しながら、こう語っています。

「医療機器開発のステージアップ率は26.8%、上市は0.6%。研究成果をどう臨床現場まで届けるか、出口志向の議論を強めるべき時期。」

さらに、国際展開のための取り組みも後退傾向にあることが示され、産業振興としての国際戦略再構築が次期計画の大きなテーマになることが示唆されました。



今後の政策展開と求められる民間の動き


こうした議論を踏まえ、第3期計画の具体的施策では以下が重点的に盛り込まれています。

  • 国内スタートアップと既存企業の連携強化

  • AMED等を活用した研究開発の基礎から実用化までの連続支援

  • RWDやレジストリを活用した迅速審査

  • 国際共同治験、single IRBの推進

  • 医療機器産業振興拠点の充実

また、エコシステム強化に向けて、官民ファンドや「MEDISO」「CARISO」等の相談・支援体制を通じた資金・ノウハウ供給も進められる見込みとなっています。

これらの政策は単なる補助金支援に留まらず、「出口志向」「国際展開」「データ駆動型開発」という視点で一貫している。民間企業はこれに呼応し、開発の早期段階から薬事・データ戦略を組み込み、国内外ネットワークを駆使してイノベーションを社会実装する動きが一層求められます。



おわりに


第3期 医療機器・ヘルスケア開発協議会の議論は、わが国が健康長寿社会の実現と経済成長を両立するための重要な方向性を示しています。今回の議論を通じて、国内外の医療ニーズに応え、サプライチェーンを多様化しながら競争力を維持・強化するために、政策と民間が一体となって挑戦する構図がより鮮明となりました。

この潮流をチャンスと捉え、国内企業やスタートアップが積極的にエコシステムに参画し、日本発の医療機器イノベーションを世界へ届ける未来を期待します。


出所:第7回 医療機器・ヘルスケア開発協議会(第3期 第1回 医療機器・ヘルスケア開発協議会)https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/medical_equipment_healthcare/007.html





お問い合わせ Mail:sales@minlabo.co.jp

執筆者 :山本 快仁

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