
はじめに
MINLABOインサイトではヘルスケア業界に巻き起こる様々な課題について深堀をしていきます。今回はヘルスケア市場では2025年問題と言われて来た時代の転換の幕開けに、2025年以降のヘルスケア市場を見据えてMINLABO視点で注目ポイントをあげていきます。
MINLABOの独断と偏見で選択していますのでMINLABOファンの皆様にとって少しでも参考になればと言う思いです。
※記事に出てくる言葉
ION-717:(抗senseオリゴヌクレオチド)
注目の2つの情報ソースをご紹介
2025年ヘルスケア業界は国内外で大きな転換点を迎えようとしています。日本国内では、超高齢社会における地域医療の重要性がますます高まる一方、国外では精密医療や新たな治療技術が注目されています。今回は、新たな地域医療構想等に関する検討会資料とNature Medicineに掲載された2つの情報をもとに、2025年以降のヘルスケア分野ののトレンドをMINLABO視点で深掘りしていきます。
国内ヘルスケア
「新たな地域医療構想等に関する検討会」のとりまとめ
国内ヘルスケアを見極めるにあたり、MINLABOで注目したのは厚生労働省の検討会で2024年3月から合計15回開催されている”新たな地域医療構想等に関する検討会”の資料です。特に全体のとりまとめ資料が公開されていますので参考にしました。要点を整理していますが、ご興味ある方は直接下記のリンクからご確認お願いします。
参考資料元:新たな地域医療構想等に関する検討会 > 「新たな地域医療構想等に関する検討会」のとりまとめ
新たな地域医療構想等に関する検討会のまとめ資料から見えてくる趨勢
2040年頃を見据えた新たな地域医療構想では、「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担を明確化し、限られた医療資源を効率化することを目指しています。以下の具体的な施策が計画されています:
高齢者救急への対応
高齢者の救急搬送増加に伴い、受け入れ体制の強化や、早期のリハビリテーションを提供して早期退院を促進する体制を構築します。在宅医療と医療機関の連携を強化し、救急搬送の抑制。
在宅医療の強化
地域ごとに24時間対応可能な在宅医療体制を整備し、オンライン診療や訪問看護ステーションの機能強化を進めます。また、診療所と中小病院の連携による効率的な医療提供。
医療の質と人材確保
医療従事者の確保と働き方改革を推進し、急性期医療の集約化を進めます。医師の修練機会を確保しつつ、診療科ごとに必要な人材を確保。
地域医療提供体制の維持
過疎地域では、ICT活用や医師派遣、巡回診療などの仕組みを整備し、地域で必要な医療機能を維持。
医療機関機能の明確化
医療機関ごとに高齢者救急、在宅医療、急性期医療、専門医療などの機能を明確化し、地域全体での役割分担。
構想区域の見直し
医療需要や地域特性に応じて、構想区域の柔軟な見直しを行い、過疎地域では市町村単位での医療提供体制。
法制度の改正と今後の計画
新たな地域医療構想では、法制度の改正を含む必要な措置が講じられます。2025年度に国で新たなガイドラインを策定し、2026年度から地域の医療提供体制全体を見直し、2027年度以降に具体的な医療機関の再編や協議が進められます。こうした計画を通じて、持続可能な医療提供体制の構築が目指されます。
国外ヘルスケア
2025年に医学を変える11の臨床試験
Nature Medicine, 2024年12月号, Volume 30発行で、著者はPaul Webster, Natalie Healeyの
”2025年に医学に大きな影響を与える可能性のある臨床試験”に着目しました。この論文では世界的にヘルスケアをリードする11名の専門家にインパクトのある臨床試験を聞いてみたと言うユニークな内容です。
未来を形作る臨床試験
Nature Medicineに掲載された「2025年に医学を変える11の臨床試験」では、以下のような革新的な試みが取り上げられています。
プライオン病の遺伝子治療
• 極めて稀な神経変性疾患に対する治療開発。
• ION-717(抗senseオリゴヌクレオチド)によるプライオンタンパク質の生成抑制。
• フェーズ1/2試験が進行中で、早期治療介入の可能性に期待。
精密栄養学
• 食事効果の個人差を解明するため、食事、遺伝、腸内細菌、生活習慣などの要因分析。
• 8,000人以上を対象に食事反応のパターンを予測する大規模プロジェクト。
• 2025年に初期データ公開予定。
CBDによる精神病予防
• カンナビジオール(CBD)を活用した精神病予防の多国籍試験。
• 精神病進行の予防や治療効果を、MRIや血液検査などで評価。
• 2025年に最初の結果が出る見込み。
鎌状赤血球症の塩基編集
• 塩基編集技術を用いて胎児ヘモグロビンを増加させ、症状改善を図る。
• フェーズ1/2試験で有望な結果が期待されるも、試験中の副作用も課題。
クールルーフによる熱関連疾患予防
• 高反射性屋根の導入で建物内温度を下げ、健康改善を目指す。
• 西アフリカでの試験では心拍数や体温を指標に介入効果を評価中。
前立腺がん治療の進展
• 放射性医薬品「ルテチウム-177」の治療効果をフェーズ1/2試験で検証。
• 早期治療導入の可能性が議論され、2025年にFDAの承認結果が出る見込み。
子宮頸がんスクリーニング支援チャットボット
• HPV検査促進のための多言語対応AIツール。
• 低教育層や社会的に不利な地域の女性がターゲット。
• 2025年にランダム化比較試験の結果が出る予定。
精神健康向けモバイルツールキット
• 青少年とその親を対象に、精神健康支援を行うデジタルツールを開発。
• 親子間のコミュニケーション向上や自己認識促進を目指す。
個別化乳がんスクリーニング
• 遺伝や生活習慣を基にリスクに応じたスクリーニング戦略を提案。
• 6か国で53,000人以上を対象に国際試験を実施中。
家庭菜園による栄養失調対策
• ケニアとブルキナファソで実施中の家庭菜園プロジェクト。
• 栄養多様性を高めることで気候変動による栄養不足に対応。
自閉症児向け学習ゲーム
• 親子の社会的同期を強化し、自閉症児の社会的スキルを向上。
• 臨床試験でゲームの有効性を検証中。
「筋質力」の国内ヘルスケア。「爆発力」の国外ヘルスケア
人口減少段階に入る国内ヘルスケア市場。「持続可能な医療提供体制」がキーワードになります。それは、限りある医療・介護資源の効率的な活用。ムダ、ムリ、ムラを除いて生産性の向上が焦点になります。言わば筋質化ではないでしょうか。
一方で臨床試験の切り口で限定的に国外ヘルスケア市場を読み解くと、バイオ、デジタル、AIなど玉石混交の様相ではありますが、それだけ爆発力を秘めていそうです。今後注目の革新的な技術がグローバルレベルで伸びていく状況を注視しましょう。
お問い合わせ Mail:sales@minlabo.co.jp
執筆者 三原義久:MINLABO

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